プロジェクト“とき”・・・このネーミングは、学名「Nipponia nippon」と呼ばれる鳥である「朱鷺」から引用しました。今や天然の朱鷺は日本では絶滅し、人工繁殖によってかろうじてその種の保存がなされている鳥です。
私は、古より脈々と受け継がれてきた日本固有の文化や風習も、この鳥と同じ状況にあるのではないかと感じ始めて久しくありません。わずか半世紀ほど前の日本は、今日の日本と果たして同じ国なのかと感ずることがあまりにも多く、ひょっとするとこの国は、一度絶滅して表層的な部分だけを繕った国家という形だけを残したものではないのかと考えてしまうことすらあります。
地域社会や家族の結びつき、信仰心や自らを戒めるこころと言ったメンタルな分野から、気候風土の違いが織りなす建築技術や町並み景観などのフィジカルなものまで、おおよそ文化と称される大半が変わってしまったように思えて仕方がありません。まさに日本が朱鷺の状況に思えて仕方がないのです。
これは、決して過ぎ去った時代を懐かしむノスタルジアで言っているのではなく、それこそ時のながれに沿って人の世がゆっくりと移り変わっていく事は当然と思いつつも、問題はその変わり方で今の日本は果たして大切なものをちゃんと受け継ぎながら変化を遂げているのだろうかということです。
私見ですが、文献的に考証できうるこの国千数百年の歴史の中でも明治維新、昭和の敗戦という二つの大きな転換史実は、それまで受け継がれてきたものをごっそりと忘れてきた、あるいは捨て去ってきてしまったのではないかと考えるのです。
未来は現在の延長線上であるべき様として変化していくことは当然とは思いつつも、その根幹に必ず「本質」が備えられていなければならないはずです。私の危惧はこの「本質の欠落」にあります。
このプロジェクトは、そういったこの国に永々と受け継がれてきた「本質・本物」を検証しながら、忘れ去られた大河の文化を再確認し、言うなれば「日本人が、もう一度日本人に戻ろう」をテーマに、先人たちの築き上げた至宝の知恵に近づきたいという社会実験プログラムと思って頂ければよいかと思います。
私は、人々の活力の根幹の中でも「誇り」を重要視しています。この町に生まれたこと・この地域に育まれたこと・この国に生きること・・・日本は世界でも最も高い精神文化を持つ国であり、それこそが「誇り」と感じれる再確認が、今だからこそ必要と思えてなりません。どうかこの新しい試みに、懲りずに付き合って頂ければ幸いです。
一般社団法人 日本伝統文化研究機構 理事長
統括プロデューサー 鈴木伸悟 |